「おしりがムズムズとかゆい…」 ~「痔」とは関係のないかゆみ~

やはり「痔」の場合は出血や痛みがメインで、「かゆみ」は二次的な訴えとなるようですね。その他に、「かゆみ」の原因となる疾病はありますか?
山名:痔の症状がない患者さんでまず考えられるのは、きれいに拭ききれていない便によるかぶれです。便の成分はアルカリ性で、特に下痢便の時にはアルカリ性が強くなるので皮膚に刺激を与えて、かゆみを生じます。香辛料などの刺激の強い食べ物やコーヒー、コーラなど特定の飲食物を摂取したときにかゆみを訴える患者さんもいます。
対処法は、便通を改善し、おしりをきれいにしておくことです。他には、カビの一種である真菌による感染症状でおしりに湿疹を生じることがあります。赤ちゃんのオムツかぶれと同じ症状です。
また、ヘルペス、尖圭(せんけい)コンジローマなどウイルス性の感染症でもかゆみを生じることがあります。ヘルペスはブツブツとした小さな水ほうを生じるのが、また、尖圭(せんけい)コンジローマは小さな突起のような皮膚いぼを生じるのがそれぞれの特徴です。
注意しておきたいのは、乳房、会陰部、肛門周囲などアポクリン汗腺にできる特殊な腫瘍で、皮膚がんの一種である「ぺージェット病」です。見た目は皮膚の湿疹で、症状はかゆみがメインなのですが、検査をすると悪性のページェット細胞が見つかることがあります。非常にまれな疾病ですが、かゆみを伴った湿疹の鑑別としては見逃せない病気です。