「おしりがムズムズとかゆい…」 ~「痔」に伴うかゆみ~

おしりのトラブルの中でも「かゆみ」を訴える患者さんは多いのでしょうか? 山名哲郎先生(以下、山名):大腸・肛門科を受診される患者さんの中で、「かゆみ」を訴える人は決して少なくありません。
おしりのかゆみには、痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔ろう(あな痔)といった「痔」に伴って発生するかゆみと、「痔」とは関係のないかゆみが考えられます。
代表例として、1つ目排便後におしりがジメジメとしてかゆい。何かイボ のようなモノもある。2つ目、排便の際に痛みや出血がある。その後かゆみを感じることもある。3つ目、下着が汚れることや、かゆみを感じることがある。 4つ目、出血や痛みはないけれど、肛門のあたりがムズムズとかゆい。
まず、1~3のような症状を訴える患者さんでは「痔」を発症していて、その症状のひとつとして「かゆみ」を訴えるケースが多くみられます。たとえば、1つ目の症状は「痔核」がかゆみの原因だと考えられます。痔核の脱出に伴って漏れ出した腸内の粘液が肛門の周囲に付着すると、粘液の刺激によってかゆみが生じます。
また、いぼ状の痔核表面はでこぼこしているので、排便後、便をきれいに拭きとれずに付着してしまい、周囲の皮膚がかゆくなるケースもあります。いずれにしても、かゆみを感じるのは、痔核そのものではなくて、あくまでも肛門の周囲の皮膚部分です。
2つ目の症状は、「裂肛」が原因で、排便の際に切れた傷が治りかけたことでかゆみを生じていることが考えられます。裂肛の主な症状は痛みや出血で、かゆみは二次的な症状です。
また、痔の手術を行った患者さんの場合、傷がきれいに治っていく過程でかゆみを生じることもあります。手術後の経過としては良好な証拠であるとも言えます。
3つ目の症状のように、「痔ろう」により、膿が肛門の周囲に出てジュクジュクした場合にかゆみを訴える人もいますが、それほど多くはありません。